日時 :2024年11月7日(木)16:30 〜 18:40
場所 :立命館大学BKCウエストウイング6階数理科学科談話会室&ZOOM
講演者1 : 富田昌 先生(明治安田生命)16:30-17:30(質疑応答込み)
講演題目: 「破産理論におけるCramér-Lundberg modelの一般化とその数学的性質」
講演要旨:
破産理論は損害保険数理の一分野で、保険会社の純資産(サープラス)の変動を確率過程としてモデル化し、そのリスクを分析する。本講演では発生頻度の不確実性と保険料の改定に着目して、古典的なCramér-Lundbergモデルの一般化を提案し、その数学的性質について述べる。提案するモデルは、クレーム発生は混合ポアソン過程に従い、保険料率はベイズ推定により設定され、被保険者は複数である。このモデルにおいて、破産確率がクレーム強度の分布や被保険者数に依存しないことを示し、またクレーム強度で条件づけた場合の破産確率の単調性について述べる。本講演の内容は高岡浩一郎氏(中央大)、石坂元一氏(中央大)との共同研究に基づく。
講演者2: 小澤知己 先生(東北大学) 17:40-18:40(質疑応答込み)
講演題目: 「トポロジカル量子ウォーク:平均カイラル変位を例として」
講演要旨:
物性物理学でトポロジカル絶縁体という物質が発見された。これは、電子状態が適切な意味でトポロジカルに非自明になっているような物質であり、物質の表面・端において観測可能な現象につながることが知られている。物質の電子状態はハミルトニアンと呼ばれる自己共役演算子の固有ベクトルの性質と密接に関係する。つまり、適切な意味でハミルトニアンのトポロジーが非自明であるような物質がトポロジカル絶縁体である。電子状態の時間発展はハミルトニアンを含む微分方程式であるシュレディンガー方程式で記述されるが、電子状態の時間発展を量子ウォークととらえるとき、トポロジカルに非自明なハミルトニアンに従う時間発展に対応する量子ウォークがトポロジカル量子ウォークである。本講演ではトポロジカル絶縁体の説明から始めてトポロジカル量子ウォークの基礎的な部分を紹介し、トポロジカル量子ウォーク由来の非自明な現象の例として平均カイラル変位(mean chiral displacement)を解説することを目標とする。講演者は物理学者であり、トポロジカル絶縁体の専門家ではあるが量子ウォークの、特に数学的な側面は専門としていない。講演を通じて異なる分野の科学者による有意義な交流ができることを期待している。