2015年度
Math-Fi seminar on 21 May
2015.05.17 Sun up
- Date : 21 May (Thu)
- Place: W.W. 7th-floor, 4th lab.
- Time : 16:30-18:00
- Speaker: Yasuhiro Tsubo (Ritsumeikan University)
- Title: パワー則に従うスパイク時系列が示唆する制約付エントロピー最大化原理
- Abstract: 制約付エントロピー最大化仮説の詳細は次の通りである.運動課題中のラット大脳皮質運動野の神経細胞から記録されたスパイク時系列のスパイク間隔分布は長時間部分でべき的な減衰を示し(パワー則),その分布は一般化第2種ベータ分布でよく記述できた.一方で,脳スライスとして切り出した神経細胞に定常ランダム電流を入力した際に出力されるスパイク時系列のスパイク間隔分布は指数的な減衰を示し,ガンマ分布でよく記述できることがわかっていた(この結果はモデルでも再現される.神経細胞の内外の電位差を微分方程式によりモデル化した場合,対象の神経細胞が他の神経細胞から確率的なスパイクを多数受け取っていると考えると,この状況は確率微分方程式と閾値で記述され,スパイク間隔は初期通過時刻問題を考えることに対応する). さて,一般化第2種ベータ分布とガンマ分布という,この2つの一見矛盾する知見は, 1)神経細胞は発火率パラメータで決められる形状パラメータ一定のガンマ分布に従って確率的にスパイク間隔を生成する, 2)活動中の動物の脳内の神経細胞では発火率パラメータは大きく時間変動し,その分布は別のガンマ分布に従う, という構造(2重ガンマ過程)を仮定するとシンプルに統一的に説明できる.さらに,発火率がガンマ分布に従うということから,発火率と生成スパイク間隔の間では相互情報量は最大化されておらず,むしろ条件付エントロピーとエネルギーの上限が制約された下での発火率のエントロピー最大化の解となっている.また,情報理論で非常によく議論される加法的ガウスチャネルの場合,相互情報量最大化の解と制約付エントロピー最大化の解は一致する.以上から,神経細胞は発火率のエントロピーを制約条件付で最大化するよに,情報を表現するキャリアである発火率の使い方をデザインしているという仮説が立てられる.